居宅介護支援事業所BCP手引き・テンプレート・シミュレーション訓練キット
在宅医療の災害時における医療体制強化支援事業 連携型BCP・地域BCP策定モデル事業は、先進的に連携型BCP・地域BCP策定に取り組む地域をモデルとし、今後の全国展開に資するプロセス、使用されるツール類を創出することを事業趣旨としている。2022年度の取り組みでは、伴走支援したモデル地域の1つである新潟県新潟市の新潟市居宅介護支援事業者連絡協議会とともに、居宅介護支援事業所BCP手引き・テンプレート・シミュレーション訓練キットを開発した。
厚生労働省特別研究 在宅医療・ケア提供機関のBCP策定に係る研究
厚生労働省医政局事業:在宅医療の災害時における医療体制強化支援事業
「災害なんていつ来るか分からないので、来たその時に考えればいい」このような考えは、あまりに楽観的すぎる。平時にできないことは、有事にできるわけがない。平時に考え備えていなければ、有事は場当たり的に対応するしかなく、すべてが後手に回る。これでは、患者や住民の大切ないのちや健康、そして生活を守ることはできない。 こうした有事対応に実効性を持つツールとして注目されているのが、業務継続計画(Business Continuity Plan:BCP)である。このBCP策定により、Preventable Disaster Death(PDD:防ぎ得た災害関連死)の約半数を阻止できる可能性があると報告されている。 2021年度、厚生労働省の特別研究として、在宅医療・ケアを提供する、入院医療機関、無床診療所、訪問看護事業所の3種の形態別に、各々のBCP策定に資する手引き、テンプレート、およびシミュレーション訓練キットを開発した。
2022年度からは、厚労省医政局事業として、前年度策定したツール類を活用した全国研修を展開している。
さらに、連携型BCP・地域BCP策定支援事業を委託され、2022年度は13のモデル地域を採択し、各地域が連携型BCP・地域BCPへ展開する取り組みを支援した。2023年度は、モデル地域を増やしていく予定である。
厚生労働省委託事業「人生の最終段階における医療・ケア体制整備事業」 本人の意向を尊重した意思決定のための研修会在宅医療・施設ケア従事者版相談員研修会 ~E-FIELD Home:Education For Implementing End-of-Life Discussion at Home~
2018年3月に改訂された「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に基づき主に病院セッティングの専門職対象に研修が行われていたが、より生活の場、暮らしの場でのガイドラインの活用に焦点を当てた在宅医療・ケア従事者版相談員研修会(E-FIELD Home)の研修プログラムの開発およびトライアル研修を厚労省医政局事業として行った。
2021年度から、以下の趣旨で、E-FIELD Home研修の全国開催を行っている。
- ACPを含めたガイドラインの内容を理解し、在宅医療や介護施設等、生活の場、暮らしの場を支える実践の場で相談員として機能できる人材養成にあたる指導者を養成する
- 今後、各地方ブロックまたは都道府県で、継続的に研修会を独自に開催できるような体制を構築し、相談員の量・質の拡充に資する人材を育成する
内閣府デジタル田園健康特区事業 茅野ヘルスケア領域プロジェクト
国家戦略特区諮問会議における審議等を経て、デジタル田園都市国家構想の実現に向け、2022年4月に、スーパーシティ2市、デジタル田園健康特区に2市1町がそれぞれ指定された。 デジタル田園健康特区の一つである長野県茅野市では、健康医療情報の自治体を超えたデータ連携の実現、訪問看護の質向上のためのポケットエコーを活用した排泄管理アセスメントといったプロジェクトが実施され、データ連携や先端的サービスの実施を通じて地域課題の解決を実現していくことで、デジタル田園都市国家構想の実現につなげていくことが期待されている。 弊社は、茅野市のヘルスケア領域のPMOとして機能した。
内閣府デジタル田園健康特区事業 諏訪圏域「食べる・出すプロジェクト」
医療・介護機関を利用される方々が、療養場所を移動しても、その方にとって最善のケアが継続して提供される仕組みづくりの重要性は認識されつつも、機関間の情報分断は未だ大きな課題となっている。 諏訪圏域内での情報連携の仕組みづくりの一環として、圏域内の医療・介護機関と共に、患者・利用者の「食べる(摂食嚥下)」「出す(排泄)」に関し、共有する情報を標準化、さらには、DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)化することで、療養場所が変わっても、その方にとって最善のケアを継続していく仕組みを構築することを目的としたプロジェクトを展開した。
内閣府デジタル田園健康特区事業 訪問看護エコープロジェクト
排泄ケアは、ご本人のリカバリーの支援のベースとなるケアであり、当事者に排泄コントロールを取り戻すプロセスであるべきである。訪問看護にありがちな計画排便ではない、エコーを用いて適切なアセスメントを行いながら本来の排泄ケアを目指していくNurse×Techプロジェクトを立ち上げた。 半年間で400例のレポートが挙がった。エコーにより、排泄アセスメントの質が向上、医師とのコミュニケーションの質の向上、また利用者・家族とのコミュニケーションの質の向上があった。 Techをうまく使って、その方にとっての最善をあきらめない排泄ケアに。
OPTIM Project
Outreach Palliative care Trial of Integrated regional Model
厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」
OPTIM プロジェクト(Outreach Palliative care Trial of Integrated regional Model、厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」は、
- 地域緩和ケアプログラムの実施前後で、がん患者の自宅死亡率、緩和ケア利用数、緩和ケアの質評価が向上するか検証すること
- プロジェクトそのものの経過を通じて、緩和ケアの推進に取り組んでいく際に役立つ成果物や介入過程を作成すること
を目的とし、2005年から行われている戦略研究の一部として実施された。
平成20年度から22年度にかけて、公募で選ばれた鶴岡三川、柏、浜松、長崎4地域を研究フィールドとして、がん緩和医療・緩和ケアに関する質の向上とその普及に関する研究活動を行った。まず市民の方々、医療スタッフなどを対象にがん緩和ケアに関する認識度や要望を調査した。それを基に、上記4地域で、統一した介入方法(人材、冊子、DVD、研修会企画など)を決め、地域の関連する多職種・多機関の研究グループを組織し、介入前後の地域緩和ケアに関する質の向上・維持が実質的にできたか否かを数値で評価するという、世界的にも、緩和医療・緩和ケアに関する数少ない大規模な前後比較研究であった。
最終解析結果は、地域連携モデルを組織化していく際に生じる様々な問題に対する克服法など、構築プロセスに関する研究知見と合わせて、OPTIMレポート2012として発行した( http://gankanwa.umin.jp/report.html )。また介入地域で実施された介入の詳細はOPTIMレポート2011にまとめている。結果の解釈の妥当性を確認するために、主要な結果についてはpeer review(査読)のある学術雑誌に順次投稿し、主たる結果はLancet Oncologyに掲載された。
Matsudo Child to Community Project
Child-to-Child というアプローチがある。これは、プライマリ・ヘルスケアの考えに基づくと同時に、特に子供たちに焦点をあて、彼らの能力を評価し、地域社会のメンバーとして子供たちが重要な役割を果たす権利と責任があるという信念に基づいている。しかし、もともと「Child-to-Child アプローチ」は、発展途上の国々において、年長の子供が幼い妹や弟たちに衛生面や栄養に関する知識を伝授するというコンセプトである。
わが国の地域包括ケアシステム構築に資する地域のソーシャルキャピタルの蓄積や住民の自助・互助・共助・公助に対する認識の向上に関して、我々はこの Child-to-Child アプローチの発展系として、Child-to-Community というアプローチを提案した。つまり、子供たちにこれらを教育することで、彼ら自身の健康や地域に関する関心や認識を高めるだけでなく、その波及効果として地域全体の認識の向上や活性化を目指すというプロジェクトである。
「子供たちに伝えたいことがあります」、「子供たちに伝えてほしいことがあります」を群市医師会の医師たちの出前講座という形で実装し、さらに、「子供たちの力で地域はもっとつながり合える」という仮説を実証した。
文部科学省科学研究事業:救急・在宅医療連携による地域介入が終末期医療に及ぼす影響の実証とメカニズムの解明(ふくろうプロジェクト)
49万人を対象とした高齢者のアドバンスケアプランニング(ACP)のstepped-wedgeクラスター比較試験を完遂し、現在、データ解析中である(文科省科学研究事業:基盤B(2016~2019):救急・在宅医療連携による地域介入が終末期医療に及ぼす影響の実証とメカニズムの解明)。当該研究は、増え続ける高齢者救急搬送という社会課題への解決を目指したMixed Methodによる実装研究である。ケアマネジャー、施設の生活相談員やかかりつけ医などが、要介護高齢者の人生の最終段階での治療やケアや療養場所の希望に関するACPプロセスを積み重ね、本人の意思を推定する情報を記載した文書を作成し、その情報を救急医療や搬送先医療機関等と共有することで、本人の意思を地域全体で支えるという趣旨である。市役所、消防局、病院協会、専門職団体など、地域のステイクホルダーをcollective Impactやアウトカムパスウェイの理論を用いてプロジェクトを運営した。
西日本豪雨 倉敷・高梁川流域 医療保健福祉提供体制支援プラットホーム Kurashiki area Medical & Care Reconstruction Association(KuraRA:クララ)
2018年7月、倉敷市連合医師会は、西日本豪雨により甚大な被害を受けた倉敷市を含む高梁川流域の医療保健福祉提供体制支援プラットホーム:Kurashiki area Medical & Care Reconstruction Association (KuraRA:クララ)を創設した。KuraRAは、被災者への直接支援でなく、被災地の医療保健福祉を提供する機関の早期復旧・復興のための支援を行い、または適切な支援に繋げる機能、つまり「間接的支援機能を持つプラットホーム」である。
日常的な運営は、倉敷市連合医師会および地元医療機関のサポートを受けつつ、各地で在宅医療を提供しながら、地域包括ケアの具現化やシステムの構築に日々取り組んでいる日本在宅医学会(2019年5月、日本在宅医学会と日本在宅医療学会は合併し、日本在宅医療連合学会として新たにスタート)の有志会員で行った。
まびケアプロジェクト
被災後、自宅から離れた小学校等への避難を余儀なくされている方がいらっしゃる。こうした方々を気遣い、「うどんの無料券置いていきます。是非食べに来てください!」「シャンプ―無料でします。ホッとしに来てください!」といったご近所の方々による善意のビラが避難所の壁を埋めている。
しかし、ビラに書かれているのはお店の住所。避難されている方は、同じ市内とはいえ、住所だけでその場所が同定できるほどの土地勘がある方は、そう多くはない。そのお店がどこにあるのか、歩いていけるのかといったことが、よく分からないのだ。
こうした実情から生まれたのが、この「まびケア」。
住民の方々やボランティアさんから寄せられた地域の暮らしや健康に関する情報を地図情報ルート案内と併せてタイムリーに発信する、あたたかな支援の輪を確実につなぐためのツールを開発した。
神戸市医師会未来医療検討委員会
神⼾市医師会では医療を取り巻く新たな課題に対応するため、平成 30 年 8 月に未来医療検討委員会を発足させた。そして、「人生の最終段階における医療を受ける際」に各自の「意思をどのように決定するか?」ということを最初のテーマとして取り上げた。それへのアプローチとして、まず「地域包括ケアシステム構築および地域共生社会の実現に向けて解決すべき現場の課題」に関し、神⼾市内の医療介護に関わる 31 機関/団体(計 216 名)にインタビュー調査を⾏った。
その結果、以下の 5 つの課題が抽出された。
- 高齢者救急搬送増加に伴う救急医療とプライマリケアの役割分担と協働の重要性
- 人生の最終段階における医療・ケアに関する本人の意向の不在
- かかりつけ医機能・嘱託医機能が不明瞭かつ不十分で、個人差・機関差が大きい実態
- 地域全体での入退院⽀援への取り組みが不十分
- 認知症の人へのサポートシステム構築および認知症フレンドリーなまちづくりの必要性
上記課題に対応する解決策として、また本事業の骨子として以下の3介入を提案する。
- 緊急時情報共有ツール(Advance Care Planning に関する情報項目を含む)の運用
- 認知症の人への Advance Care Planning サポートシステム構築
- 市⺠啓発(Advance Care Planning(人生会議)、認知症等)
上記3介入を含む本事業については、KOBE Fundamental reform in Regional based Integrated Empathetic Networking for Decision MAking Support Project(KOBE Friend₋mas Project:神⼾フレンドマスプロジェクト)と命名する。つまり、本事業は、神⼾における地域ベースの包括的で皆が共感しうる意思決定⽀援ネットワークの基礎をつくりあげ、最後まで自分らしく生きることができる「共生型まちづくり」を住⺠とともに目指すプロジェクトである。
事業の目的
- 高齢者の身体状況や緊急連絡先の情報のみならず今後の治療や療養に係る希望に関する情報を記載した文書(緊急時情報共有ツール)や意思決定⽀援プロセスに関する情報を地域で共有・運用することで、本人の意向が尊重される切れ目のない医療や介護の提供を可能にする。またこの緊急時情報共有ツールを使うことで、Advance Care Planning へのとっかかりを作ることができる。地域で取り組む Advance Care Planning は、特に望まない救急搬送を減少させる可能性があることから、住⺠の「幸せ」のみならず、救急医療の適正利用に繋がる。
- 認知症神⼾モデルの次なるステージとして、専⾨職のみならず住⺠も参画する地域ベースの意思決定⽀援ネットワークの構築により、たとえ認知症が進⾏しても自身の希望を叶える包括的なサポートを受けつつ、また一方でコミュニティの一員としてその人らしい生活を継続できる「共生型まちづくり」を住⺠と共に目指す。
- 上記⼆つの事業目的を達成するためには、市⺠全体を巻き込んだ取り組みが必要である。そのための1手段として、Advance Care Planning や認知症、あるいは健康や地域医療などに関するものを子供達の教育に組み込むことにより、その知識や認識が大人達さらには地域全体に伝えられる(Child-to-Community)ことを目指す。
倉敷市連合医師会 地域包括BCPプロジェクト
Business Continuity Plan(BCP)とは、災害などリスク発生時に業務が中断しないために、また万が一中断した場合でも、目標復旧時間内に重要機能を再開させ、業務中断に伴う損害を最低限にするために、平時から事業継続について戦略的に準備をしておくというものである。BCP策定は災害拠点病院の指定要件に位置付けられ、当該病院における策定が急ピッチで進められているものの、その内容については機関完結型である。しかし、実際の災害において、患者の搬送、診療の場所の確保等を含め、地域全体の連携なしには、医療提供を継続することはできない。また、医療だけでなく、介護機関においても、発災後のケアサービスの継続は大きな課題であり、いわゆる災害弱者・要配慮者への対応を含め、平時より更なる医療介護連携の重要性が増す。
真備町では、実際の被災経験や知見をもとに、病院・診療所・介護施設を含めた地域包括ケアの文脈の中で、地域連携型の「地域包括BCP」の策定を目指すことになった。倉敷市連合医師会と吉備医師会がプロジェクトのマネジメントを行い、災害拠点病院がそのプロセスを専門的な見地からサポートする。最終的には、地域包括BCP策定の倉敷市全域におけるスケールアウト(横展開)を目指す。地域包括BCP策定プロセス自体が、地域全体の防災・減災活動のimplementationを牽引すると確信している。